映画スラムダンク『THE FIRST SLAM DUNK』なぜ宮城リョータが主人公に?ネタバレあり解説

2022年公開の『THE FIRST SLAM DUNK』(ザ・ファーストスラムダンク)は井上雄彦の名作バスケットボールマンガ『スラムダンク』の劇場版です。

原作の物語をベースに、新たな設定や視点が加えられた作品になっています。

映画スラムダンク
引用元:https://itplanning.co.jp/inoue/i221020/

あらすじ

今作は、湘北高校バスケットボールチームの一員である宮城リョータに焦点を当てています。
原作では主人公の桜木花道や流川楓が目立つキャラクターとして描かれていましたが、この映画では宮城リョータの過去や内面的な成長にスポットライトが当てられています。

宮城は小柄な体格ながらも俊敏で卓越したバスケットボールの技術を持ち、湘北の攻めの起点として活躍しています。
原作には無かった彼の家族、特に兄への思いや母親との関係、バスケットボールにかける情熱が描かれることで、キャラクターに新たな深みが加わりました。

映画では原作でいうところのラスボス的ポジションで、高校バスケ界の絶対王者といわれている山王工業との試合です。

当然、名場面盛りだくさんで映画版でも臨場感あふれる描写がなされています。
宮城を中心に、湘北のメンバーが全力で戦い抜く姿が描かれ、バスケットボールの熱い戦いと彼らの成長が感動的に表現されていました。

『ザ・ファースト・スラムダンク』は、バスケにかける青春や仲間との絆を描くと同時に、キャラクターたちの内面に迫り、新たな魅力を引き出す作品となっています。

映画スラムダンク
引用元:https://eiga.com/movie/94436/

キャスト

  • 宮城リョータ(湘北高校バスケ部のポイントガード、今作の主人公)
    声 – 仲村宗悟
  • 桜木花道(湘北高校バスケ部のパワーフォワード、原作の主人公)
    声 – 木村昴、島袋美由利(少年期)
  • 流川楓(湘北高校バスケ部のスモールフォワード、エース)
    声 – 神尾晋一郎
  • 三井寿(湘北高校バスケ部のシューティングガード、元中学MVP)
    声 – 笠間淳
  • 赤木剛憲(湘北高校バスケ部のセンター、キャプテン)
    声 – 三宅健太
  • 木暮公延(湘北高校バスケ部の副キャプテン)
    声 – 岩崎諒太
  • 安西光義(湘北高校バスケ部の監督)
    声 – 宝亀克寿
  • 彩子(湘北高校バスケ部のマネージャー)
    声 – 瀬戸麻沙美
  • 赤木晴子(湘北キャプテン赤木剛憲の妹)
    声 – 坂本真綾
  • 深津 一成(山王工業バスケ部のポイントガード、キャプテン)
    声 – 奈良徹
  • 河田雅史(山王工業バスケ部のセンター)
    声 – かぬか光明
  • 沢北栄治(山王工業バスケ部のガードフォワード、高校No.1プレイヤー)
    声 – 武内駿輔
  • 宮城ソータ(宮城リョータの兄)
    声 – 梶原岳人
  • 宮城カオル(宮城リョータの母親)
    声 – 園崎未恵
  • 宮城アンナ(宮城リョータの妹)
    声 – 久野美咲

ネタバレありの解説

映画『ザ・ファーストスラムダンク』では、原作で描かれなかった設定が数多くありました。

物語の中心 宮城リョータ

宮城リョータ
引用元:https://moviewalker.jp/api/resizeimage/news/article/1133272/11703904?h=500

まず、そもそもなぜ主人公を宮城リョータにしたのでしょうか?

原作『スラムダンク』では、宮城リョータは湘北のポイントガードとしてチームに重要な役割を果たしていましたが、桜木花道や流川楓、三井寿といったキャラクターに比べて個人の過去や内面はあまり深く掘り下げられていませんでした。

そして、原作者であり映画の脚本・監督を務めた井上雄彦先生は映画制作にあたり、次のようにインタビューで語っていました。

原作をただなぞって同じものを作ることに、僕はあまりそそられなくて。もう一回スラムダンクをやるからには新しい視点でやりたかったし、リョータは連載中に、もっと描きたいキャラクターでもありました。

引用元:https://gaga-mag.com/thefirstslamdunk/

作品の中でも、バスケットボールの「天才」たちが目立つ中で、宮城は特別な才能ではなく、努力や粘り強さで勝負するキャラクターです。
井上先生は、こうした宮城のリアルな苦悩や成長を描くことで、観客により深い感動を与えたかったのではないかと考えられます。

そんな今作の主人公に抜擢された宮城リョータですが、沖縄で暮らしていて、上に兄、下に妹がいる3兄妹の真ん中という設定です。
しかも、最初の回想で父親を亡くした後であろうシーンから、立て続けに兄のソータまで海難事故で亡くしてしまいます。
ちなみに宮城リョータと亡くなった兄のソータは、兄弟なのに誕生日が一緒という設定なんですよね。

この辺が映画用の後付け設定てんこ盛りだなぁと感じました。

ですが、1998年の「週刊少年ジャンプ」9号に掲載された『ピアス』という読み切り作品の中で、上記の設定の一部が描かれていました。

もしたしたら井上先生の頭の中では、昔から宮城リョータの設定は出来上がっていたのかもしれませんね。

母親との関係

夫と長男を亡くし、そのことをなるべく忘れたい母・カオルと亡き兄・ソータの背中を追っているリョータの間にはギクシャクしたものがありました。

物語の最後でインターハイから帰ってきたリョータが、海辺に座っているカオルに向かっていきます。
カオルはリョータに「おかえり」と言い、リョータは「ただいま」と返し、ソータの形見である赤いリストバンドを渡しました。
このシーンで二人は、「過去」ではなく「今」を、そして家族としてお互い正面から向き合えるようになったのではないかと感じました。

山王工業との試合

映画での戦いの舞台は、湘北高校と全国トップの強豪校山王工業との試合です。

3DCGの技術を使った迫力あるプレー描写や緻密なカメラワークが、試合の緊張感や興奮をリアルに伝えています。

そして、繰り出される原作にもあった数々の名言。

試合の始まりと湘北の苦戦

最初こそ最強・山王工業相手に互角の戦いを見せていたものの、後半から攻撃の起点である宮城リョータが、山王からダブルチームでディフェンスされてしまいます。

山王の鉄壁のディフェンスと冷静な試合運びに対し、湘北はなかなか突破口を見いだせず、徐々に点差を広げられていきます。

山王に20点以上差を付けられたところでタイムアウト、そこで出ました!安西先生の名言「あきらめたらそこで試合終了ですよ」安西先生といえばこのセリフですよね。

湘北の反撃と桜木花道の奮闘

小暮と交代してベンチにいる桜木に対して、安西先生はオフェンスリバウンドの重要性を伝えました。

そして、またコートに戻った桜木が、いきなり机の上にあがり「ヤマオーはオレが倒す!!by天才・桜木!!」と観客席に向かって叫ぶという暴挙に出ます。
ですが、この行動により背水の陣になり、勝利を諦めかけた湘北の仲間たちの闘志に、再び火をつけることができました。

それから徐々に自分たちのリズムを取り戻し始め、桜木花道のリバウンドや三井寿のスリーポイントシュートが決まり、試合の流れが少しずつ変わっていきます。

流川楓と沢北栄治の激突

湘北のエース流川楓と山王のエース沢北栄治の1対1の戦いも見どころの一つです。

沢北は、圧倒的なスピードと技術を持ち、高校No.1プレイヤーと言われている選手です。
流川は幾度も沢北に挑みますが、ことごとく負かされてしまいます。

しかし、1on1で自ら抜くのではなく、仲間にパスすることで沢北を出し抜きました。
流川からのパスでスリーポイントシュートを決めた三井の名言が「静かにしろい この音が・・・オレを蘇らせる 何度でもよ」です。さすが炎の男 三っちゃんカッコいいですね!

試合終盤の劇的展開

宮城リョータが再びダブルチームで圧をかけられてしまいます。
ですが今度は、試合を見に来ていた母親の思いと、彩子の声援を受け「こんなでけーのに阻まれてどーする ドリブルこそチビの生きる道なんだよ!!」とディフェンスに来ていた、山王の深津と沢北を抜き去りました。

着実に点差は縮まり、いい流れになってきたのですが、ルーズボールに突っ込んで負傷してしまった桜木は交代を余儀なくされてしまいます。
それでも、性格上もう一度交代しようとする桜木が、それを止めようとする安西先生に「オヤジの栄光時代はいつだよ?全日本の時か?オレは・・・オレは今なんだよ!!」と断固たる決意を伝えコートに戻るのでした。

湘北の勝利

激しい攻防の中、遂に湘北が逆転します。が、そこは最強・山王すぐに逆転し返します。

点を取ったことに山王サイドが沸き、残り時間9秒、誰よりも先に桜木がゴールまで走ります。
赤木から流川へのパスで残り4秒、ゴールまで行きシュート体勢に入った流川に、河田と沢北の二人がブロックに来て残り2秒、流川の目に入ったのは一番先にゴールに来ていた桜木。
流川からボールをパスされた瞬間、声には出ていなかったですが、全スラダンファンには聞こえたであろう桜木の「左手はそえるだけ・・・」
シュートが決まり、湘北の勝利で試合終了からの流川と桜木の無言のハイタッチ。最高の名シーンですね。

試合会場を後にし、廊下を歩いている山王の選手たちに「はいあがろう 「負けたことがある」というのが いつか大きな財産になる」と堂本監督は声をかけるのでした。
最強チームを指揮する堂本監督の非常に素晴らしい名言です。

その後

舞台はアメリカに移り、沢木がインタビューを受けているシーン。
からの、なんと対戦相手のチームの中にリョータがいて、二人はアメリカでも戦うのでした。

ここは確かに、原作を知っていると違和感がありましたね。
湘北のメンバーで、アメリカに行ってるんだとしたら流川だろうと。ですが、まあこの映画の主人公はリョータなので、それは仕方ないのかなとも思いました。

まとめ

原作では描かれなかった宮城リョータの過去や家族の話が物語の中心に据えられています。

3DCGを活用した試合シーンでは、キャラクターの動きや表情、試合の緊迫感が巧みに再現されており臨場感たっぷりでした。

評判を見てみると、声優や原作からカットされたシーンのことで、酷評されてる部分もあるみたいですね。
ですが、TVアニメから20年以上も経った作品の新作映画ですから、声優が変わるのは当然ですし、2時間の映画に全てのシーンを入れられないのも仕方のないことだと思います。

個人的には大好きなマンガ『スラムダンク』の映画化といことで、とても楽しめましたし、非常に素晴らしい作品だと感じました。

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